流通加工とは?目的や課題、アウトソーシング時のメリットなどを解説

商品が製造されてから消費者のもとに届けられるまでの過程で、欠かせないのが「流通加工」の作業です。適切な流通加工がされるかどうかで、商品自体の価値をはじめ、顧客満足度や企業の信頼性などが大きく左右されます。

しかし、適切に流通加工を行おうにも、その詳細や具体的な注意点がわからずに困っている方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、物流において不可欠な流通加工について、その詳細な種類から行う目的、アウトソーシングする際のメリットや注意点などを、詳しく解説していきます。

自社商品の流通加工についてお悩みのある方は、ぜひ参考にしてください。

流通加工とは?

流通加工とは、商品の付加価値を高めるために行う加工作業のことです。

商品は完成して終わりだと考えられがちですが、流通の過程で適切な加工を行うかどうかによって、それを手にした顧客の満足度は大きく変わってきます。そのため、商品の価値を高め、企業の売り上げをアップさせていくためには、自社の商品に合った流通加工を施すことが不可欠だといえます。

とはいえ、ひとくちに流通加工といっても扱う商品の種類や目的によって、その詳細は多岐にわたります。そのため、都度適切な対応が取れるよう、柔軟な姿勢で取り組むことが重要です。

流通加工の種類

流通加工は、厳密に言うと「生産加工」と「販促加工」の2種類に分けられます。

この区分については、物流会社によって記述が異なるケースが多く、分かりやすくまとまっている専門書もほぼありません。ここでは、それぞれの違いについて、業界ごとの具体例を添えながら詳しく確認していきましょう。

種類①:生産加工

生産加工とは、たとえば「商品をカットする」「組み立てる」など、材料や部品をもとに、商品に対して直接的な加工を行うことを指します。生産加工の主な目的は、消費者に適切な品質と機能を持つ製品を提供することです。

一般的には、以下の作業が生産加工に分類されます。

「材料の加工(金属加工、木材加工、食品加工、プラスチック加工など)」「切り分け(カッティング)」「梱包」「丁合」「組み立て(自動車・家具・電子機器など)」

たとえば、「切り分け(カッティング」であれば、スーパーにおけるカット野菜や調理しやすいようにスライスされたお肉などがあげられます。カット工程によって使用するエンドユーザーが材料を使いやすくなる効果があります。

また上記の5項目には記載してませんが、たとえばアパレル業界におけるタグやラベルの添付、アウターのハンガー掛けなども生産加工となります。なぜならばシワが無い状態で、タグやラベルが製品と一致しているからこそ、機能としても適切であるからです。

一方で、書籍やネット情報ではタグやラベルの添付は販促加工に分類されている場合もあるため、混乱する方が少なくありません。

少しややこしいですが、「生産加工」と「販促加工」を区別する重要なポイントは、「『工場などの製造段階』と『物流センターや店舗など、販売前の準備プロセス段階』のどちらで作業されたか」です。そのため、基本的には製造工場側で実施されたラベル添付は生産工程に、物流センターや店舗側で行ったラベル添付は「販促加工」となります。

これは、梱包や丁合でも同様です。したがって「生産加工」か「販促加工」の判別は作業内容ではなく、その行為が製品の製造・生産プロセスのどの段階で何を目的として行われるかによるため、あまり気にする必要はありません。

すなわち、基本的には工場で行う加工は生産加工であり、物流センターや小売店で行う加工は販促加工であるケースがほとんどです。ただし、食品業界のカッティングやパック詰め、家具部品の組み立てなどは当初から物流センターや小売店のバックヤードで製品化が完了することを前提に業務が組み立てられているため、生産加工に含まれると言えます。

種類②:販促加工

販促加工とは、その名の通り販売を促進させるため、つまり商品価値を高めるための流通加工です。

 

一般的には、「検品」「ラベリング」「ギフト包装(ラッピング)」「アソート」「シュリンク」などが

前述の生産加工と同様、販促加工の詳細も業界によってさまざまです。たとえば、ひとくちに検品といっても、製品すべてをチェックする「全数検品」と、サンプルを抽出して行う「抜き取り検品」があります。また、製品の外観を人の目で確認して品質をチェックする「目視検品」、触って針の混入などを見極める「触手検品」などもあり、人の手でなく機械を用いて検品する例もあります。

 

また、ラベリングであれば輸入食品業界の「付記されている現地語の成分表示に日本語表記シールを貼り付け」や化粧品業界における「ボトルの成分ラベルを貼り替え」も重要な販促加工です。これらは食品衛生法や薬機法で定められているため、万が一漏れていた場合、企業には罰則やリコールが命じられるため、販促結果やブランドのイメージに多大な悪影響を及ぼします。

 

販促加工において特に重要なことは、同じ商品であっても、顧客の年齢、性別、エリアなどに応じて、加工方法の正解が変わるという点です。たとえば化粧品業界では、購入回数に応じてチラシを同梱したり、クロスセルやアップセルに繋がるよう、購入商品に合わせたサンプルを封入したりなどの販促加工が行われます。また、他の小売り業界においても、特別感を演出するため、顧客の名前入りのメッセージカードを入れるなどの加工が行われています。

 

しかし、これらの加工は一度でもミスが発生した場合、途端に効果がマイナスに転じます。たとえば、間違えた名前のメッセージカードを封入したり、ギフト需要なのにラッピングをせずに値札を付けたまま発送したりすれば、顧客からの信頼は一瞬で失われてしまうでしょう。

そのため、効率的かつ適切な販促加工を行うためには、デジタルで制御するシステム管理が非常に重要だといえます。

流通加工をする目的とは?

流通加工をする目的は、大きく「商品の付加価値を高める」ことと、「消費者の信頼性を高める」ことの2点に集約されます。

ここでは、それぞれの詳細について確認していきましょう。

流通加工の目的①:商品の付加価値を高める

流通加工を行う1つ目の目的は、商品に適切な加工を加えて、生産されたときよりも価値を高めることです。

たとえば、食肉は切り分けた状態で梱包したり、棚などの面倒な組み立て作業は事前に済ませておいたりすると、商品を受け取った顧客は手間が少なくなり、より高い満足感を得られます。

先述の通り、顧客の属性などに応じて適切な加工を行えば、競合他社との差別化ができ、リピーターの獲得に高い効果が期待できます。

流通加工の目的②:消費者の信頼性を高める

流通加工を行う2つ目の目的は、商品の不備や不良を事前に検知し、消費者の信頼性を高めることです。

たとえば、どんなに人気のブランドだとしても、洋服に針が混入していたり、食品に異物が入っていたりすれば、消費者からの信頼は一瞬で地に落ちます。

ここで重要なのは、イレギュラーが1件でも発生すれば、信頼を取り返すために何十倍もの時間と労力が必要とされる点です。悪評は良い評判以上の速さでまたたく間に広がり、デジタルタトゥーとして長期間ネットに残ってしまう可能性もあります。

そのため、流通加工でイレギュラーを適切に弾ければ、企業の信頼性を高く保ち続けられるのです。

流通加工における課題

以上見てきたように、流通加工は小売りを中心とした多くの業界で、非常に重要な意味を持つ作業です。しかし、実際は多くの企業が、その取り組みに課題を抱えています。

ここでは、代表的な課題を3つ厳選して確認していきましょう。

流通加工の課題①:人的リソースがかかる

流通加工は非常に手間のかかる作業なので、効率良くかつ正確に行うためには、多くの人的リソースが必要です。そのため、人材に余裕のある企業でもない限り、流通加工に自社人員を割いてしまうと、商品開発やマーケティングといったコア業務のパワーダウンを招いてしまいます。

とはいえ、空前の人手不足が叫ばれている現在、人手に余裕のある企業などいないでしょう。実際、2022年に日本商工会議所と東京商工会議所が実施した調査によれば、全国の中小企業の約65%が「人手が不足している」と回答しています。

もちろん、中には加工屋など流通加工を専門とする企業もいますが、輸送コストの上昇やクイックコマースが重要視される中、よりスピーディかつ低コストな運用を求められているのは間違いありません。

参考:「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況」の集計結果について~「人手が不足している」と回答した企業は64.9%と、過去最高水準に迫る~|日本商工会議所

 

流通加工はノベルティや同梱対応など、作業の詳細やルールがしばしば変わります。また、不良品かどうかの線引きが曖昧であったり、規格がバラバラ、箱の形状が複雑、きめ細かい基準の検品や組み立て、セット加工などが求められたりするため、機械化が難しく人の手でやる領域が多いです。

そのため、少しでも人的リソースを削減できるよう、システムを導入したり、専門の業者にアウトソーシングしたりなど、適切な対応が求められます。

流通加工の課題②:スペースの確保が必要

幅広い種類の流通加工に対応するためには、設備や資材を置くための十分なスペースが必要とされます。

自社倉庫で流通加工を行う場合は、スペースが足りずに作業品質が落ちたり、設備や資材の設置によって、その他の物流作業の効率が落ちたりなど、弊害が生じやすい点に注意が必要です。

また、精密機械の検査などの場合は、流通加工時に暗所が必要だったり、温湿度が一定の範囲内でなければならなかったりなど、スペース以外の制約も生まれてくることがあります。

流通加工の課題③:初期投資が高額になりやすい

流通加工の中には、X線検針、シュリンクの機械、バリアブル印刷、梱包機など、人手を省いて機械化が可能な領域も存在します。しかし、それらの設備は高額なものが多いため、自社で導入するには高額の初期投資が必要となります。

設備投資によって、長い目で見ればコストダウンが図れたとしても、予算に余裕がなければ導入が難しい場合もあるでしょう。また、先述の通り流通加工は詳細やルールが途中で変更される可能性もあるので、投資額を回収する前に作業が不要になるケースもあり得ます。

そのため、予算に余裕がなく設備投資が難しい場合は、必要な設備を既に持っている専門業者にアウトソーシングすることも、視野に入れておくとよいでしょう。

流通加工をアウトソーシングして得られるメリットとは?

流通加工を専門業者にアウトソーシングすることで、数多くのメリットを得られます。

ここでは、代表的な3つのメリットについて、詳細を確認していきましょう。

メリット①:自社リソースの確保

手間のかかる流通加工をアウトソーシングすれば、自社リソースをコア業務に注力させることができます。これが1つ目のメリットです。

ここまで強調してきた通り、流通加工は欠かすことのできない重要な作業ですが、あくまでも生産の脇を固めるノンコア業務です。どんなに流通加工に注力したところで、その元となる商品に魅力がなければ意味がありません。

流通加工をプロの手に任せれば、自社リソースを商品開発や日々目まぐるしく開発されるSNSやプラットフォームなどのマーケティングツールの活用に人的リソースを割くことができ、より魅力的な商品を作り出せるでしょう。

メリット②:高品質な作業の実現

流通加工は、ミスの許されない繊細な作業です。そのため、不慣れな自社人員で行うよりも、専門業者にアウトソーシングした方が、高品質な作業が実現します。これが2つ目のメリットです。

プロの手で流通加工を行えば、1つひとつの加工精度が上がり、ヒューマンエラーの率も激減します。コストカットのために自社で流通加工をしたとしても、洋服に針が混入していた、輸入商品に日本語表記ラベルを貼り忘れた、メッセージカードの宛名を間違えた、など1つでもミスがあれば本末転倒です。

顧客満足度を高く維持していくためにも、流通加工はプロの手に任せることをおすすめします。

メリット③:コストの見える化、および削減

流通加工を専門業者に委託することで、そこにかかるコストが見える化します。それに加えて、自社で内製化するより効率的に運用できるため、結果的にはコストが削減される可能性が高いといえるでしょう。これがメリットの3つ目です。

また、流通加工はスポット的に発生することも多く、常に一定の件数があるとは限りません。そのため、自社で固定費として運用するよりも、必要に応じて業者に外注する変動費にした方が、結果的にお得に運用できるケースが多いといえるでしょう。

流通加工のアウトソーシングにおける注意点

以上見てきた通り、流通加工は専門業者にアウトソーシングするのがおすすめです。しかし、業者をしっかり選定してから依頼しないと、思わぬデメリットに繋がる可能性もあります。

ここでは、流通加工をアウトソーシングする際、特に注意すべき点を3つ確認していきましょう。

注意点①:柔軟な対応ができない可能性がある

流通加工をアウトソーシングすると、複数の企業の商品をまとめて扱うため、自社独自のラッピングなど、柔軟な対応ができない可能性に注意が必要です。

そのため、アウトソーシングを決める前に、対応可能なラッピングの種類について、詳細を確認しておきましょう。また、一部をラッピングして他はラッピングしないなど、融通の効くラッピングが可能か、自社スタッフ以上に丁寧に商品を扱ってくれるか(雑な梱包をしないか、向きや並べ方などブランドの世界観を守ってくれるか)などについても、事前に確認しておくと安心です。

過剰包装なども問題になる昨今では、「資材管理を含めたブランディングを手伝ってくれる業者へアウトソーシングすること」が非常に重要だといえます。また、品質管理や人材育成をしっかりしているかどうかも確認すれば、長期的な協力体制を築いていけるでしょう。

注意点②:必要な免許やスペースを取得しているか

流通加工をアウトソーシングする際は、必要な免許を取得しているか、十分なスペースが確保されているかについても確認しておきましょう。

たとえば、高度医療機器や医薬部外品、化粧品など、専門の資格を持っていないと流通加工が行えないものがあります。ラベルの貼り替えなどの簡単な作業であっても、無許可で行うと法令違反になり、依頼主に責任が追求される可能性もあるので注意が必要です。

また、防塵や防虫、防鼠などの衛生管理に加えて、保管場所で温度管理と湿度管理ができるのかなど、事前に倉庫を見学して詳細を確認しておくとよいでしょう。

その他、過去に同業種の流通加工をしてきた実績があるか、作業の詳細がマニュアルに落とし込まれているかなども、併せて確認しておくと安心です。

注意点③:トレーサビリティ

流通加工をアウトソーシングする際は、万一に備えてトレーサビリティを重視している業者を選びましょう。

どんなに信頼できる業者に依頼したとしても、万が一のミスや事故が起こる可能性はあります。そのようなとき、工程ごとにモニター管理を徹底している業者であれば、遡って原因を追求し、答え合わせをすることができます。また、いざというときには動画を提出することで、リスクヘッジにもなるでしょう。

【まとめ】適切に流通加工を行い、自社の商品価値を最大化しましょう

今回は、物流における重要な作業である「流通加工」について、その目的や課題、アウトソーシングすることで得られるメリットや業者選びの注意点などを、詳しく確認してきました。

流通加工は、商品価値を向上させ、顧客満足度や企業の信頼性を高く保つために不可欠な作業です。自社で行う場合、かけたリソースのわりには品質が安定しないことが多いので、より高い水準での作業を求めるなら、信頼できる業者へのアウトソーシングがおすすめです。

今回ご紹介したことを参考に、適切に流通加工を行い、自社の商品価値を最大化していきましょう。

 

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