通販物流(EC物流)とは?
特徴や改善方法、今後の課題などを詳しく解説!
EC需要が拡大してきたことで、新しくEC通販に参入する企業が増えています。
しかし、これまでは企業相手のBtoB取引が多かったり、そもそも物流への取り組み自体が初めてだったりと、通販物流(EC物流)に課題を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、従来の物流と通販物流の特徴の違いや、それらを踏まえた改善方法、今後解決していくべき課題などを詳しく解説していきます。
通販物流に関する不明点や悩みのある方は、ぜひ参考にしてください。
通販物流(EC物流)とは?
通販物流とは、通販事業における商品の流れ、およびそこでの作業のことです。
企業対企業のやり取りであるBtoB(Business to Business)の物流と異なり、通販物流においては個々の消費者を相手にするBtoC(Business to Customer)がメインとなります。そのため、企業を相手にする場合とは異なる点での注意が必要です。
なお、「通販物流」とよく似た言葉に「EC物流」がありますが、両者の表す意味は少し異なります。
通販とはもともと、実店舗以外の販売チャネルを総称する言葉で、そこにはテレビ・ラジオ・新聞などの広告媒体、カタログ通販、ダイレクトメール、そしてEC(インターネット販売)が全て含まれています。
つまり、通販物流はこれらのチャネル全てにおける物流を指しますが、EC通販はその中でも、インターネット販売に特化した物流サービスを指すという違いがあります。
とはいえ、通販物流とEC物流を同じ意味で使用している業者も多く存在しますので、代行契約などを結ぶ際は、自社に合うサービスかどうか見極めることが重要です。
通販物流の特徴とは?
特徴①:出荷先が多岐にわたる
通販物流は、従来のBtoB物流と比べて、出荷先の種類が多く作業が煩雑になりやすいという特徴があります。
卸先や小売店に出荷するBtoB物流においては、1つの出荷先に何十点~何百点などと、まとめて配送するのが一般的です。その一方、通販物流では個々の消費者に直接商品を送るため、出荷先の数がBtoBの比ではなく、出荷作業がより煩雑なものとなります。
1件の出荷先に100点を送るのと、100件の出荷先に1点ずつ送るのとでは、ヒューマンエラーの発生機会は、単純計算で100倍に高まります。そのため、納品書の入れ間違いや送り状の貼り間違いなどが起きないよう、より入念な確認が求められます。
特に、ギフト購入の場合は一層の注意が必要です。商品の内容を間違えたり、誤って金額が記載された納品書を同梱してしまったりすれば、致命的なクレームに発展してしまいます。
特徴②:在庫管理が複雑になりやすい
通販物流には、通常の物流と比べて在庫管理が複雑になりやすいという特徴もあります。
BtoBで企業に出荷する際は、同じ商品を大量にやり取りするのが一般的です。そのため、各商品をまとまりで管理でき、在庫管理に頭を悩ませる機会は少ないでしょう。
その一方、消費者から直接注文が来るBtoCの通販物流においては、商品をサイズや色などのバリエーションごとに細かく保管しなければなりません。その結果、各区画での在庫管理が複雑になり、作業員の負担増加やヒューマンエラーの発生率上昇を招いてしまいます。
また、通販物流では商品の返品もしばしば発生します。返品商品はあらためて検品をし、その他在庫と同様に販売できるように棚入れする必要があります。その際、タグが切れているなどのイレギュラーも頻発しますので、より作業負担は大きくなるでしょう。
特徴③:梱包に工夫が求められる
通販物流においては、発送した商品がそのまま消費者の手元に届きます。そのため、梱包用の段ボールや商品の並べ方にも工夫が必要です。
従来の物流において、段ボールは商品を詰めるための単なる容器としてしか扱われません。しかし通販物流の場合、段ボールは商品パッケージの一部です。そのため、顧客満足度を向上させてリピーターを増やすためには、段ボールにロゴやデザインを入れたり、開封したときに綺麗に見えるよう、商品の並べ方にこだわったりすることが大切です。
とはいえ、過剰に包装すればよいわけでもありません。近年ではSDGsが重視されているため、エコ包装が求められる場合もあり、ケースバイケースで梱包に工夫を施すことが求められます。
特徴④:個々の顧客に合わせた同梱物
通販物流では、個々の顧客に合わせて同梱物を変えることが多いです。
同梱物とは、商品と一緒に梱包されるチラシやアンケート、サンプルなどの品物を指します。どのような同梱物が適切かは、顧客の属性やセグメント、購入頻度などによって異なってきます。
たとえば、初回購入者には次回購入時に使える割引クーポンを同梱したり、リピーターにはおすすめ商品のサンプルを同梱したりなどの施策が効果的です。
顧客ごとに適切な同梱物を封入できれば、顧客満足度の向上やLTVアップに直結しますが、実施には相応のリソースがかかるので注意が必要です。
特徴⑤:ギフト需要への対応が必要
通販物流では、ギフト需要への対応が必要な点も特徴的です。
まず、配送する商品がギフトの場合は、梱包の際に別途ギフトラッピングをしたり、メッセージカードを同封したりといった対応が求められます。このときに送り先の名前を間違えたり、納品書を入れて金額が見えてしまったりといった出荷ミスがあれば、ブランド価値が地に落ちるリスクがあります。
また、ギフトはクリスマスや父の日、母の日など、1年のうちの特定の時期に集中します。これらの期間中は、数日間で通常の何十倍もの注文が入るケースも少なくありません。そのため、出荷数が急増しても無理なく捌けるよう、余裕をもってリソースを確保しておく必要があります。
特徴⑥:誤出荷が生じやすい
以上のように、通販物流には通常の物流にはない特徴が数多くあるため、誤出荷に繋がりやすい点に注意が必要です。
先述の通り、通販物流は出荷先が多岐にわたるため、不慣れな状態で行うと誤出荷の確率が飛躍的に高まります。特に、充分な物流ノウハウを持たない状態で通販物流に参入する場合は、一層の注意が必要です。
顧客のもとに誤った商品が届いてしまうと、顧客満足度が著しく低下し、最悪の場合はクレームに発展します。その結果、自社利益を大きく損ねるだけでなく、ブランド価値にも傷が付いてしまいかねません。
通販物流を改善する方法とは?
以上見てきたように、通販物流には通常の物流業務と異なる特徴があるため、注意して運用しないとこれらが問題として表面化してしまいます。
ここでは、通販物流の問題点を改善するために実施したい、具体的な方法を3つご紹介します。
方法①:物流業務のフローやロケーション管理を見直す
通販物流を改善するためには、物流業務のフローや、倉庫のロケーション管理を見直すことが効果的です。
今まで企業相手のBtoB取引が中心だった場合は、ここまで見てきた通り物流業務の特徴が異なるため、フロー全体を抜本的に見直した方がよいでしょう。その際、実践的なフローを構築するためには、見直しを1回だけで済ませず、定期的にブラッシュアップしていくことが重要です。
また、SKU数やABC分析などを行い、適正なロケーション管理を行うことにより、保管効率と生産性の高い入出庫管理を実現することができます。
方法②:システム連携とマテハン機器の導入
物流業務を効率化するには、各種システムとの連携やマテハン機器の導入も効果的です。
基幹システムや受注管理システム、顧客管理システムなど、他のシステムとのシームレスな連携を可能にするシステムを導入すれば、物流業務における省人化・自動化が実現します。その結果、リソース削減と作業の精度アップの両方を図れるでしょう。
また、商品の形状や重量、SKU数を勘案して、ソーターやSASなどのマテハン機器を導入すれば、庫内作業の生産性を高めることもできます。ただし、マテハン機器を導入する際も、倉庫内の物流を制御するシステムがあることが前提となりますので注意しましょう。
方法③:物流業務をアウトソーシングする
通販物流を自社で行うのが不安な場合は、専門業者にアウトソーシングする方法もあります。
物流の専門家である業者に任せれば、自社で行うよりはるかに効率的な作業が実現します。当然、依頼するためのコストは発生しますが、それによって省かれたリソースを商品開発などのコア業務にまわせば、事業全体の利益伸長が期待できます。
ただし、一括りに通販物流といっても、商材の種類によって作業詳細は異なります。そのため、物流業務をアウトソーシングする際は、自社商材に合った対応ができるか、ニーズに合わせてシステムをカスタマイズできるかなど、詳細を事前にしっかり確認してから依頼するようにしましょう。
通販物流における課題
EC通販の市場規模が拡大する中、通販物流における課題がいくつか表面化してきています。今後さらに通販物流を拡大していくためには、これらの課題を解決する必要があります。
最後に、通販物流における代表的な2つの課題について、詳細を確認しておきましょう。
課題①:ドライバー不足
通販物流において、個々の商品を消費者のもとに届けるドライバーは、必要不可欠な存在です。しかし、EC通販の需要が拡大する一方、ドライバーの数は減少傾向にあるため、今後深刻なドライバー不足が予想されます。
ドライバーが不足している背景には、配達件数が増えていることに加えて、ドライバーの低賃金・長時間労働という原因も影響しています。それらを是正するため、働き方改革関連法の影響により、2024年4月1日以降はドライバーの時間外労働の上限が制限されます。しかし、直近ではそれがかえってドライバーの収入減少や荷主の支払いコスト増加などを誘発し、「2024年問題」として新たな諸問題を表面化させることが予想されます。
今後快適な通販物流を維持していくためには、全国的なドライバー不足を改善するため、労働環境の整備やITシステムの活用など、多方面での対策が求められます。
課題②:ラストワンマイル問題
「ラストワンマイル問題」とは、最寄りの配達店など、荷物が配送の最終拠点にあるにもかかわらず、消費者の手元まで届かない問題の総称です。
ラストワンマイル問題の原因の1つは、先述のドライバー不足です。最終拠点まで荷物が届いているのに、それを各家庭に運ぶドライバーが不足しているために、なかなか配達が完了せずに留まってしまいます。
また、配達に赴いたにもかかわらず留守で届けられず、後日再度配達するという「再配達」も、人手不足の大きな原因となっています。そのため、最近では宅配ボックスの設置や、不在でも玄関前に配達する「置き配」サービスの普及などが進められています。
ラストワンマイル問題を解決するために、IT技術を駆使した新たなプラットフォームやツールが開発され始めています。たとえば、自動運転車やドローンによる配達の自動化や、フードデリバリーと同様、ラストワンマイルの配送を一般人にアウトソーシングしたりといった施策が進められています。
また、大手ファッションモールの中には、配送日を遅くすることで通常よりも送料を割り引いたり、別途ポイントを付与したりといったサービスを実施しているところもあります。
【まとめ】通販物流を攻略して通販事業を成功に導きましょう!
今回は、通販物流の特徴や改善方法、今後表面化してくる課題などについて詳しく解説してきました。
オンラインショッピングが当たり前になった今、通販物流の需要はますます増えていくことが予想されます。顧客満足度を高めて自社のブランド価値を維持していくには、ミスなく効率的な物流作業を実現できるよう、システム連携や専門業者へのアウトソーシングなどの対策が求められます。
今回ご紹介したことを参考に、通販物流の諸問題を解決し、通販事業を成功に導きましょう。
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